事業再構築補助金、成果報告

コロナ禍で経営環境が激変したことに対応して、新事業を始める事業者を応援するという趣旨の「事業再構築補助金」ですが、採択までお手伝いしても分かりやすく紹介できる事例がありませんでした。
この週末にオープンしたお店の事例を紹介します。

e-sports café LIG

川崎駅近く、仲見世通り沿いに出店された、川崎市初のeスポーツカフェです。

座席は40席、部屋が大きく2つに別れて、それぞれの部屋に大型モニターが設置されています。座席には27インチモニターがあります。

金額は3時間で1,200円。沢山使う方にはパック料金の設定があり、100時間25,000円です。

https://www.esportscafe-lig.com/

事業再構築に至った理由

この補助金を申請した会社は元々は溶接工事業者です。
新しい事業を行おうと考えたきっかけは「コロナ禍」で日本に外国人が入れなくなってしまったためです。建設の現場は体力的に厳しい仕事でもあり、日本人だけでは現場が回せないので、外国人の力も不可欠なのですが、入国できなくなったため、本来は受注できる仕事であってもキャパの問題でスルーするしかなく、売上が大幅に減少しました。
そのような中、将来経営を担う経営者ご子息が「eスポーツカフェ面白そう」というところからスタートしました。

当方の支援内容

今の事業内容、新しい事業に取り組む必要性を教えていただいて、ざっと新しい事業で考えていることをお聞きしました。といっても、建築業と娯楽施設とでは仕事の中身も全く異なるので、どの位の投資を考えているのかというところをお聞きして、後はこちらであれこれ想定してアウトラインを作っていきました。

・どの位の広さで何席あって、どのくらいの売上になるのか
・毎月、どの位の費用がかかるのか
・初期投資を回収するためにどの位の売上が必要になるのか
・初期段階の集客促進のため、どういうことを取り組んでいくのか
・だれがその事業を推進していくのか、初期段階で何人位必要になるのか

補助金申請に必要な申請書(=事業計画)を作り、提出に必要な書類の整理、webからの申請に必要な情報を整理して、電子申請のサポートを行っています。

事業開始までの道のり

採択まで

補助金は2回目の挑戦で採択されました。

事業者からの「eスポーツやってみたい」という気持ちを受け取り、事業そのものの収支予想、事業自体の将来性、競合の状況、当社のリソースなどを整理しました。

1回目は内容が十分でなかったようでしたが、2回目は「1回目ダメだったところ」を書き直して無事に通りました。

 

交付申請①物件決定まで

交付申請は「承認された事業計画に沿って、補助金を●●に使いたいので、承認してください」という手続きです。したがって、具体的な物件が決まらないと、必要な見積もりを確定できません。

補助金ありきで新事業を考えていましたので、実際は採択されてから物件を探し始めました。補助金をもらえるなら新事業に着手するというスタンスでしたので、そうなってしまいます。ただ、店舗物件を見つけるのに大変苦労されたようです。

物件をリサーチし始めてから半年かかりましたが、川崎駅前の好立地物件の賃貸契約が決まりました。

 

交付申請②交付決定まで

物件が見つかれば、店舗内のレイアウトを作って、店内に何席作るのかが決まり、補助金で購入する内容が具体的に決まります。店舗の内装工事と購入する備品類を補助金で買いますので、全て計画が固まってから補助金の交付申請を行っています。

こちらの事業者では、内装工事が想定の3倍かかってしまいました。スケルトン物件で内装に手を入れる必要があったという点もありますが、電気容量が足りなくて、施設に電気を引き込むための工事が大掛かりになりました。
工事金額がかさんだので、事業計画が書き直しになり、計画修正の理由書も提出しています。
紆余曲折の末、何とか交付決定されました。

 

補助金入金まで

この補助金では「事前着手申請」を行っていたので、交付決定を待たずに発注できます。レイアウトが決まった段階で、内装工事の発注と備品購入を自体は物件とオープン時の備品が決まった段階で行っています。内装工事に半年間かかり、備品が入り、プレオープンを経て通常オープンにたどり着いています。

この後、「確定検査」があるのですが、実際に検査員が現地に入るかどうかは不明らしく、補助金で購入したことを明確にするために備品類にテプラを貼っておくよう言われたとのことです。補助金で購入したものは耐用年数が終わるまでは処分できないのですが、eスポーツカフェだとパソコンが4年持つかどうか?という気はします。

事業再構築補助金、リアルなスケジュール

この事業者は「3回目の公募」で採択されました。

よく言われていることですが、補助金事業の原則は「先払い、後入金」ですので、事業をスタートする資金は自前で用意する必要があります。

・2021年9月申請(実際には6月にも申請しましたが×。再申請です)
・2021年11月採択→物件探し 2022年6月に物件確定
・2022年7月に交付申請→2022年9月に交付決定
・新事業スタート2022年12月
おそらく、補助金が入金されるのは2023年2月くらいです。

事業再構築補助金のメリット・デメリット

メリット

・初期投資の主だった部分の2/3を補助してもらえる
・補助金を申請するときに「事業計画」を文書化する
→そのプロセスの中で経営方針を俯瞰して考えることができる

本来、事業計画は経営者とディスカッションしながら一緒に作った方が良いですが、経営者自身が「補助金が取れたら良い」と考えがちです。
その場合は計画作成者主導の計画になりますが、それでも根拠のあるものが出来上がりますので、経営者にとっては有益でしょう。

デメリット

・時間がかかること
・初期投資の全てが補助金対象ではない
・計画作成者に「成功報酬」などの支払が生じる

特に、成功報酬のことは採択後にあれこれ言われることが多いですが、プロに何かを依頼し、最小の手間で申請でき、採択後の手続きについても最適なアドバイスを受けられるので、そのために必要な費用ととらえてもらえればと思います。

 

最後に

事業再構築補助金は全く新しいことを手掛ける補助金になりますので、単に「補助金欲しい」ということではなく、第三者のサポートを受けて、自社の新事業進出を客観的に判断してもらった方が良いかと思います。当方はフランチャイズ関連の支援(本部立ち上げ、加盟して新事業立ち上げ)を行っていますので、フランチャイズで新事業立ち上げのパターンが多いのですが、全くの新事業でも問題ありません。経験がなくて分からない点についても、こちらで調べ上げます。

当方としては、単に補助金取って終わりということではなく、補助金申請で作成した事業計画実現に向けて継続的にサポートしていく間柄になりたいと考えています。ご興味ありましたらお問い合わせください。