コンビニFCの24時間営業強制は「独禁法違反」の判断 →どうすればいいのか?

公正取引委員会は、コンビニエンスストア本部が加盟店に対して24時間営業を強制すれば、独占禁止法違反になるという見解を示しました。それによって、今後のフランチャイズ本部のあり方が変わってくると考えましたのでまとめてみました。

 

コンビニFCに公正取引委員会が改善要請した点

公正取引委員会は2020年9月2日に「コンビニエンスストア本部が加盟店に24時間営業などを強制すれば独占禁止法違反になりうる」という見解を示しています。

その他にも指摘している点がありますので整理してみます。

・24時間営業を辞めたい加盟店との協議を拒む

・近隣に出店しない約束に反して出店し、加盟店の支援もしない

・売れ残り品の値引き販売を一方的に制限する

・意に反した商品や必要以上の数量の仕入を加盟店に強いる

・加盟契約時に売上予想や収支の説明が不十分

 

独占禁止法とフランチャイズ本部

独占禁止法の考え方の中に「優越的地位の乱用」というものがあります。公正取引委員会のサイトでは以下説明がありました。

自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が,取引の相手方に対し,その地位を利用して,正常な商慣習に照らし不当に不利益を与える行為

 

フランチャイズ本部は加盟店と契約上では対等ですが、実際には優位な立場にあります。その地位を利用して、一方的に不利益を押し付けてはならないというのが独占禁止法上での考え方です。

 

これからのフランチャイズ本部に求められること

1.丁寧な情報提供

近隣に出店しないという約束をするのであれば、口約束に終わらせず、どのあたりまでを近隣というのかを丁寧に書面で協議して記録を残しておくべきです。

ただ、直営店や加盟店をどこに置くのかの全体設計をするのは本部の役割です。フランチャイズの契約には「加盟店のエリア権を否定する」文言が入っているのですが、各加盟店が好き勝手言って調整できなくなるのを防ぐためにあります。調整する権利は本部として押さえておく必要があります。

 

2.店舗開設後のローカライズ

コンビニエンスストアでは売れ残り品の値引き販売はしないのが原則で、全国どこのお店に行っても同じルールでやっているというのが一般的な理解です。消費者からすれば、値引きなんかないし、どこの店舗にいっても商品は変わらない。便利だから今買おうというのがコンビニエンスストアです。

ある店舗が抜け駆け的に値引きすることはコンビニエンスストアの根本を崩す行為であり、他の店舗の不利益になることを防ぐため、本部は一律して禁止しています。

ただ、フランチャイズは各店舗が異なる事業主になりますので、「契約で禁じているから」という理由だけで一方的に制限するのは難しいと考えます。商品を余らせて廃棄するのはSDGs的にも問題があります。

値引き販売について考えれば、値引く店舗にとっては店舗の収益を削る行為に他ならず、本来はやりたくないことでもあります。また、「あのコンビニは時間を見計らって行けば弁当を安売りする」という評判がたってしまうリスクもあります。そういったマイナスの影響を含めてやった方が良いというのが加盟店のオーナーの判断であれば、禁止を強制することはできないと思います。ただ、「安売りするコンビニ」という評判になると、安売りになるのを待って来店する人が出てくるので、極力やらない方が良いとは考えますが。

 

3.成功モデルを双方で作っていく

フランチャイズでは「収支モデル」というものが用意されているチェーンがあり、その数字は直営店の平均等から作られています。ただ、実際には店舗ごとに条件が異なりますので、その数字は参考程度でしかありません。

自分の場合は「これ以上固定費を掛けたらダメ」という目安で助言します。売上と原価率によって大まかな粗利を予想できますので、「粗利>固定費」となるように設計しないと長期的には難しいのです。コンビニであれば、近隣の商圏人口や競合店の数によってある程度の来店見込みが立ち、客単価を掛ければ日商や月商を算出できます。それで、店舗としてやっていけるのかどうかを判断できます。

また、収支モデルは過去の数字に他なりません。どうやって売上を作っていくのか、集客や購入を促すためのツールについては本部まかせにするばかりでなく、個々の店舗で精一杯取り組む必要があります。「SVが指導してくれる」というものではなく、SVのこれまでの経験やノウハウを教えてもらいながら店舗で様々なトライアルをしていくのが良いでしょう。

 

コンビニエンスストアのFCビジネスは本部が加盟店を丸抱えで指導する面があり、自分が普段接しているフランチャイズ本部とは異なる面が大きかったのですが、今回の公正取引委員会からの指導によって、本部と加盟店の立ち位置が本来のものになっていく可能性が高いです。

フランチャイズは本部と加盟店の利害が対立する場面が出てきます。どういうトラブルが起こりうるのかを予測し、リスクを回避した加盟店募集が必要です。トラブル回避と本部の発展につながるサポートをさせていただきますので、ご興味がありましたらお問い合わせください。