事業承継案件の多くは経営改善を伴う~公的支援窓口での実感

今年度は公的支援で事業承継の案件を多く担当させてもらいました。20件ほど関わって事業承継診断をして感じたのは「後継者にとって引き継げる状態」にするということです。

金融機関経由の事業承継案件

地域の金融機関は取引企業の経営支援ツールを持っている事が多いです。多くは、本部や支店で主催するセミナーや外部の公的機関と連携しての専門家派遣などです。支援メニューの中に事業承継支援に取り組む金融機関も増えてきています。

そして、紹介される側の印象としては、「事業承継にしては、経営者の年齢が高すぎる」「事業承継の前に赤字を止めなきゃダメでしょ」というのが大半でした。

 

窓口での実感①経営者の年齢が高すぎる

このように感じるのは、70代後半の経営者と面談させていただくことが多いからです。判断能力がにぶっているように感じますし、話が要領を得なくなってきます。そして、経験則に頼りすぎているように見えたり、部下を信頼していないようにも見えます。

本来であれば、60代のうちから後継者への引き継ぎを意識して、遅くとも70代半ばまでには引き継ぐのが通常の感覚ですので、そのタイミングを逃すということは「自分は大丈夫」と過信しているからに他なりません。

 

窓口での実感②先ずは経営改善が必要

自分の感覚では、金融機関からの紹介案件の8割はこのパターンでした。2年、3年と赤字が続いているのに、子供や従業員が引き継ぐと信じています。しばらくは内部留保が残っているかもしれませんが、赤字が続いていたらいずれは債務超過に転落します。その間、資金繰りがつかなくなることが考えられますので、経営者として資金調達、または経営者が会社に貸すしかありません。

経営者の子息であれ、従業員であれ、事業単体で利益を生み出さない状況であれば、無理に引き継ぐ必要はありません。自分の場合は、事業承継診断書であっても、黒字回復の大枠をお示しする方向でレポートします。

 

短期的な経営改善は実質2つしか選択肢がない

できるかどうか分からない経営改善では意味が無く、確実にできる、すぐに成果が出るやり方としては以下の2点です。

・利益率の向上(強みの活かせる商品・サービスに集中する)

・経費の削減(特に固定費、人件費や家賃など)

経営改善というと、売上を取ってくれば良いと考える経営者が多いのですが、それが出来るなら長期にわたって赤字が続く状況にはなりません。そのため、選択肢としては排除します。

 

・短期的な経営改善①経費節減は効果を見込みやすい

経費カットは第三者がみればしがらみがないので、ムダなものが見えてきます。例えば、

電話番やお手伝い的な人は要りませんし、ぶら下がっているだけの人もいりません。他では替えの効かない人だけを残してスリムにします。他にも余分な家賃や費用は減らします。

 

・短期的な経営改善②利益率の向上を検討する

利益率の高い仕事に注力します。単に値上げをするのは難しいので、高い値付けでも買ってもらえる商品を探します。そのためには、商品毎の売上と原価の把握が必須です。

自分が見てきた中では、赤字企業の多くは、粗利ベースで赤字になっている案件があることもあります。粗利が出ない仕事は価格引上げを打診し、断られたら撤退するべきです。

 

経営改善→事業承継の順番で考える

短期的に利益が出る状態にした上で、事業承継をどうする?という段階になります。

経営のことも第三者に診てもらうことで何か解決の方向が見えてくることがありますので、セカンドオピニオンをもらうのは良いことです。ご興味がありましたら、是非お問い合わせください。

 

◆自己紹介

私、山下哲博は、経営革新等認定支援機関の登録をしているビジネスコンサルタント(中小企業診断士)です。

得意分野はフランチャイズの本部立ち上げですが、店舗ビジネスやスモールビジネスの成長をサポートすることでしたら、お役に立つことができます。

・創業時の創業計画、創業融資獲得

・店舗の収支改善、集客、多店舗展開・フランチャイズ

・資金調達のための事業計画、補助金確保、経営力向上計画、経営革新計画

特に得意なのはサービス業、リサイクルビジネスです。

このブログは情報発信のために不定期に書いています。

 

あとがき

事業承継は手続き論でなく、後継者が良い状態で経営に関わるための成長戦略です。今後の成長を目指すのであれば、第三者を入れた方が良い状態で「これからの経営」を検討できます