補助金申請書作成における「作文」について

補助金申請のお手伝いの際、「作文します」とお伝えする場面が多くあります。
作文というと、勝手に作るとかでっち上げると悪く捉える方もいますので、その真意をきちんと説明するのですが、より良い計画を作るのに不可欠なプロセスと考えています。
お会いする前に予めお示しできると誤解もありませんので、その真意を文字にしてみます。

作文はコンサルタントとしての「仮説」

作文というと「適当」に何かを書くという印象を持たれるようです。未来のことは誰も分からないので、そういう意味では「適当」といえますが、全く根拠のないことではありません。

どちらかというと、断片的な情報や経営者の意思を確認し、現状からつながった形でまとめていく作業になります。

現状から何を改善していけば経営が良くなるのか、解決すべきことを洗い出し、具体的に改善していくプロセスを示し、積み上げていく作業になります。したがって、根拠を示しながら積み上げていきますので、実現可能な内容として作文していきます。すなわち、コンサルタントとして様々な経営者のお手伝いをしてきた経験から、様々な「打ち手」を示していくものです。

 

生産プロセスの作文(ものづくり補助金の例)

ものづくり補助金で求められるのは生産プロセス改善による生産性の向上です。したがって、現状の製造工程をお聞きしていき、どの工程に問題を抱えているのかを確認します。工程がスラスラ出てくる場合とあいまいな場合がありますので、その場合にはこちらで考えて製品が出来るまでに行うことをばらしていき、設備が老朽化していたり手作業になっていたりとボトルネックになっている工程を「現状の問題点」としてクローズアップさせます。

設備を導入すれば当然生産性が向上しますので、全体の生産量が増えるというシナリオになります。

 

 

売上向上の作文(補助金共通)

生産性が向上しても、その分販売量が増えないと収支は改善されないので、「売れる根拠」を作文していきます。製造業の場合、「良いものは売れる」的な考え方があることが多いので、何が良いのか、それは取引先が求めているものなのかという点について掘り下げて書いていきます。

多くは取引先からの要望事項としてまとめたり、競合企業の動向を示して競合以上の競争力があることを図で示したりという形で作文します。

事業再構築補助金の場合は、新しい事業に関するユーザーニーズ、その事業で競合する事業者の動向をまとめ、どうやって新しい市場に入り込んでいくのかを書いていきます。

 

補助金申請サポート、実際の進め方

①サポート内容の確認→②ヒアリング→③ラフ案の作成(作文)→④ブラッシュアップ→⑤お化粧

概ね、上記の流れで進めていきます。重要になるのは④ブラッシュアップになります。

①サポート内容の確認

これは補助金に関する説明と、当社でやらせていただけるかどうかの確認になります。ご紹介いただく案件の場合は進め方の確認が中心になります。そうでない場合は当社の実績や費用などが論点になります。

②ヒアリング

こちらで作文する際のベースになる情報をお聞きします。現状の経営状況、生産プロセスや業務遂行プロセスの状況と課題、どういう投資を考えているのかなどをお聞きします。

現状お考えのことを伺ったうえで、今後どうなっていきたいのかを確認していきます。

③作文

ヒアリングした内容だけで事業計画に必要なものが網羅できるわけではないので、こちらで調べたこと、これまでの経験で勘所と考えていることなどを盛り込んで、現状と今後(補助金で投資した後)についてビフォーアフターの比較で申請書の内容を埋めていきます。確信を持って書いている個所もあれば、仮説程度で書いている箇所もあります。

まずは6割くらいの出来でいったん作ります。なお、その後の数字についてはこの段階では書かないで置くことの方が多いです。

④ブラッシュアップ

補助金もらって取り組む内容のビフォーアフターのストーリーについて確認してもらい、特に作業工程などは先方からよりリアルなフィードバックをいただきます。

方向について概ね方向性が見いだせたら、収益という点でどのくらいのインパクトになるのか確認していきます。売上を倍増させるのか、20%増くらいにするのかという点については経営者でないと分からない面があるからです。経営者の意向が売上倍増なら今の組織で良いのかという点を確認しますし、売上20%増であれば投資回収できるかという指摘を行います。

数字面は一緒になって考えていくことが多いのですが、こっちの作文を元に経営者が改めて作るケースもあります。事業計画というと漠然としてしまうのですが、考える必要のあることをある程度整理したら、経営者が方向性を見出すことが多いです。

⑤お化粧

事業計画書として内容が整ったら、審査に向けてお化粧していきます。大きく、ビジュアルを入れたり、表にしたりという見栄えの改善、審査項目の抜き出しです。

10ページの申請書で文字ばかりだと、それを読む審査員がしんどいので、なるべく分かりやすく段落内容をまとめる「見出し」を付け、重要なキーワードを赤文字で強調していきます。その他、写真を入れたり表やチャートを入れたりと一読して分かりやすいように編集します。

最後に、公募要領の審査項目を再度チェックして、該当する説明を列挙していくなどの作業を行っていきます。

作文によって、効率的に事業計画を作成できる

申請書の作文というとネガティブなイメージを持たれる方も多いのですが、経営者が考えていることをヒアリングで聞き出し、それを未来につなげる説明を「仮説」としてまとめる作業が「作文」になります。

ある程度骨格があると、その内容で良いのか良くないのか、どういう方向に修正するのかを判断しやすくなります。したがって、最初のラフ案では細部を詰めずに粗く書いていき、それを詰めていく作業を行っていきます。

作文というと言葉が良くないですが、、補助金申請を考えている経営者が漠然と考えていることを文章にまとめていく作業になります。今後の方向が明確になるだけもメリットがありますので、ご興味ありましたらお問い合わせください。