2021年の中小企業向け補助金の整理 ~問い合わせの多い内容~

2020年3月頃から新型コロナウィルスの影響で従来のビジネスが困難になっている事業者が増えていることもあり、「事業再構築補助金」を中心に「補助金」が注目されるようになっています。ただ、「補助金」には縛りもあり、全ての事業者が都合よく使えるものでもないので、問い合わせをいただいてもお断りするケースや他の補助金をお勧めすることが増えています。

当方は小さな事業者から小さな金額の補助金について相談を受けることが多く、無理に大きな金額の補助金を狙わない方向でアドバイスしています。多くの方に助言している内容をまとめてみました。

 

2021年の中小企業向け補助金

補助金といっても、市区町村が独自で行っているものもありますので、全てを把握しているわけではないのですが、大まかには以下サイトで探すことができます。

・J-Net21(中小企業基盤整備機構)
https://j-net21.smrj.go.jp/snavi/support/

・東京都助成金(東京都中小企業振興公社)
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/ichiran/index.html

J-Net21は中小企業向け政策の実施機関として法律に定められて設立された独立行政法人です。上記サイトでは全国で実施されている補助金、助成金がデータベースになっていて探すことができます。

東京都は独自の助成金が充実していますので、東京都中小企業振興公社のサイトを見ると中小企業向けの助成金を探すことができます。特に、「販路拡大助成事業」は展示会出展に関する助成に使えるので使い勝手が良いのですが、事前に「経営診断」を受けることが必須になっていますので、最寄りの商工会議所などに相談すると経営診断の段取りを整えてくれます。

問い合わせの多い補助金

今までは「ものづくり補助金」の問い合わせがほとんどだったのですが、今年は補助金額の高さが話題になっている「事業再構築補助金」の問い合わせが多いです。ただ、実際には補助金の求める要件を満たさないために他の補助金を案内することの方が多いです。

案内することが多い補助金を一覧にしたのが下記の表です。

 

(1)事業再構築補助金

当社には、フランチャイズ加盟や、高額の設備投資が必要になる案件の問い合わせが多いです。事業者様からの問い合わせもありますが、フランチャイズ本部や設備メーカーなどから相談を受けています。
他の補助金との違いは「建物費」が経費として認められていることで、実際には内装工事などに使えます。なお、問い合わせを受けるのは「物件取得費」が多いのですが、単なる賃貸費用は補助金の対象になりません。

ただ、売上10%以上減少、「事業再構築」に沿った取組という縛りがあるので、対象にならないケースが多いです。

売上10%減少:(青字は第3回公募時の内容のまま)
「2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していて、2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して5%以上減少」

→2回目の公募までは2020年10月以降と2019年10月~2020年3月の同月比較でしたが、一部緩和されました。実際に売上が激減したのは全国的に休業要請がされた2020年4月、5月だと思うのですが、その時期は入っていないので、事業者の認識とズレがあります。

また、事業再構築の要件に沿うためには、①新しい製品・サービス、かつ新しい市場(既存事業の売上に影響を及ぼさない)を提供する全くの新事業であること、②新事業の売上が全社売上の10%を占める計画であることが求められます。
→ガソリンスタンドのように売上が大きな会社だと新しいことを始めても売上10%には中々届きません。

この補助金のねらい目は、もともと売上規模がそれほど大きくなく、大きな投資をしないで新しいことに挑戦してみるという事業者さまで、「緊急事態宣言枠」に当てはめてお手伝いすることが多いです。
→年商1億弱の事業者様が1,000万円位の投資で、売上3,000万位のビジネス(従業員2,3名の店舗ビジネス)を手掛けるイメージです。もっと大きな投資でも対象になりますが、当方に問い合わせて来られるのは補助金が1,000万円まで届かないケースが多いです。

(2)ものづくり補助金

従来からあった補助金で、昨年までは製造業の方が生産プロセス改善のために投資をしたいという問い合わせが多かったのですが、新しい設備を入れることで提供するサービスそのものを改めたいという要望が増えています。
今まで現地で打ち合わせをしていたのが、遠隔で打ち合わせが可能になるとか、現地の測量作業が効率化されるといった内容です。この補助金のネックは「賃上げ」が必須になることで、昨年まではそれを嫌う事業者が多かったです。設備を入れることで従業員の数を減らすことができるけれど、賃上げ要件があるので従業員を減らすことができず、本来やりたかった業務の効率化による労務コスト削減ができないので補助金申請を断念するというケースが該当します。

今年になってからそこは大きな障害にならなくなり、業務効率化というよりは新しいビジネスを手掛けるための投資として補助金を活用し、新事業立ち上げに必要な従業員を雇用するというシナリオです。

 

(3)小規模事業者持続化補助金

この補助金には通常型(補助金50万円)と低感染リスク対応型(補助金100万円)があり、圧倒的に低感染リスク型を希望する方が多いです。金額が小さいこともあり、わざわざ問い合わせしてきた方で最初から希望する方は少ないのですが、事業再構築補助金は申請するのも大変ですので、投資金額が小さい方にはこちらを案内します。

補助金は投資に必要なお金を用意して、実際に支払った後の入金になりますので、無理して投資する必要がないケースも多いです。この補助金は「販促費」にも使えるので、大きな投資ではなく、新しいことに取り組んで、それをPRしていくための費用としてお勧めしています。
いきなり背伸びして2,000万円の投資、1,000万円の補助金を狙うために事業再構築を図るよりも、まずはすぐにできることを行って収支改善を図る方が良いという判断はお問い合わせをいただき、詳細をヒアリングさせてもらう際にこちらからご案内します。

補助金申請に必要なこと

これらの補助金を申請するのに必要な準備、資料を挙げていきます。

・GビズIDプライム

補助金申請は電子申請で行いますが、その際に必要になるのがGビズIDプライムアカウントです。これがないとスタートラインにも立てないのですが、申請に1か月位かかりますので、早めに準備をしてください。
GビズIDプライムの申請について

・見積書(補助金の使い道)

補助金が欲しいという相談を受けても、使い道が決まっていないことが多いです。当初は事業再構築補助金で3000万円欲しいと言っていても、よくよく話を聞くと、500万円の緊急事態宣言枠の申請に変わったり、100万円の小規模事業者持続化補助金に変わったケースもありました。正式な見積もりは後でも良いですが、何を購入したいのかは決めてから相談した方がスムーズかと思います。

・現状、補助金取った後の展望(ビフォーアフター)

現状に何か問題があるので補助金申請を検討されているのだと思います。どういう問題を抱えていて、設備を導入することでどういう効果が期待できるのかという点について、ある程度は考えておいていただいた方が良いでしょう。
→設備を導入することで生産コストが下がるのと同時に生産量も増えるというシナリオだと、コストが下がって競争力がありますので、販売を拡大していくことになるのですが、既存客の売上を増やすのか、新規客の売上を増やすのか説明する必要があります。

・資金の確保

補助金事業は投資を行って、事業報告を行った後に補助金が入ってきます。投資を行う際の資金を金融機関から借りるのか、自分で用意するのかを考えて準備しておく必要があります。過去に、金融機関からの理解を得られず、投資できないという案件もありました。

お問い合わせについて

いろいろと挙げましたが、実際にはお話を伺いながら案内していきますので、お気軽にお問い合わせください。着手金→成功報酬という料金体系にしていますが、実際にはこちらでラフな申請書案(完成度:40~70%)を最初にお出ししてから着手金請求をさせていただいております。中には補助金申請しない方が良いのではないかという方もいらっしゃいますので、その方にはしっかりと念押ししてから先に進んでいます。実際の作成プロセスである「作文」については、以前に記しています。
補助金申請書作成における「作文」について

なお、補助金自体は通らなくても、今後の経営の方向が明確になって良かった、銀行に見せたら採択されなくても融資するのですぐ進めたい等、前向きなコメントもいただいております。コンサルタントの仕事は未来を示すという意味では占い師と同じなのですが、占い師とは異なり、お話を伺いながら1つずつ積み上げて根拠のある「貴社の未来」をお示しすること、未来の実現に向けて実行支援をしていくことができます(補助金さえ通ったら、後は必要ないという方もいますが)。ご興味ありましたらお問い合わせください。
→未来を考える(決める)ことで、その未来は実現に近づきます。漠然とした願望でなく、順序だててやることを整理し、必要な資金の一部が補助されるというのが補助金事業です。当社では単なる計画の作成代行でなく、計画の実現に向けた実行支援も行っていますので末永くお付き合いできる事業者様とのご縁を作りたいと考えております。

 

あとがき

今年も残り3か月となりました。周りはワクチン打っているし、新規感染者に一喜一憂する段階ではないはずですが、未だに医師会や分科会が人流抑制を図ろうとしていて、マスコミが大きく報じているのは残念です。少し落ち着いたら久々に生ビールを飲みたいです。家で缶ビール飲むのと全く違うので。