事業再構築補助金、産業構造転換枠の創設

事業再構築補助金は来年で3年目になり、いくつかの新しい枠が創設されます。
一番気になっているのが「産業構造転換枠」です。
行政が補助金によって、儲からない業種からの転換を促しているからです。

 

産業構造転換枠とは

中小企業庁が公表している、令和4年度補正予算の公表資料の中に、以下の通り記述があります。
中小企業など事業再構築促進事業 予算額5800億円
産業構造転換枠の創設
・国内市場の縮小等の産業構造の変化により、事業再構築が強く求められる業種・業態の
 事業者に対し、補助率を引き上げる等により、重点的に支援します。
構造的な課題に直面している事業者等が取り組む事業再構築に対する支援
補助上限額:2,000万円~7,000万円 ※廃業を伴う場合、2000万円を上乗せ
補助率:中小企業2/3 中堅企業1/2

 

事業再構築が求められる業種・業態(私感)

構造的な課題=世の中の変化で需要が減少し、今後、需要回復が見込みづらい業種を指していると考えられます。
3月位にはどのような業種が該当するのか発表されると思いますが、当方の予想で厳しい業種を挙げてみます。

状況変化が起こっている業界の例

①行政によって大枠が定められている分野
介護や医療
これらの業界は「保険」によって利用者負担が軽減されていますが、利用者が急増していることもあり、保険が追いついていきません。そうなると「自費利用」など経営の自由が得られる反面、既存サービスだけでは経営が成り立たなくなる構造にあります。
特に介護は介護保険の単価が人件費の高騰に見合っていないので、苦境に陥る事業者が増えそうです。
②脱炭素社会で不要になる分野
ガソリンスタンド、オール電化の推進でプロパンガスも需要が減退していくかと思いましたが、電力発電自体が余裕のない状態ですので、オール電化推進は遅れるのではないかと思います。
また、自動車はEVシフトが続くでしょうから、エンジンまわり部品なども厳しいかと。
③デジタル化や技術革新で不要になる仕事
経理のような定型的な事務作業、インターネットや自動化等で代替される接客サービス等が該当するように思います。
昔は高速のインターチェンジに沢山の人が料金の授受を行っていましたが、今はほとんどETCになりました。鉄道の改札や切符売り場も同様で、人が要らなくなりました。

ゆでガエルを避ける

ゆでガエルとは「ゆっくり進んでいく環境変化や危機に対応しづらい」様子をたとえたものです。
カエルをいきなり熱湯に入れると驚いて逃げるのに対し、最初は冷たい水に入れて、だんだんとお湯の温度を上げていけば逃げ出すタイミングを逸して、熱湯で茹で上がってしまうことをたとえています。
最近は人手不足と人件費の高騰が言われています。そうなると以前のように人手を使うことが前提となる仕事は継続しづらいと考えた方がよいでしょう。
そのためにも国の中小企業施策の通り、業種的に厳しいところから市場成長が期待できる分野に移っていく方が良いのです。

老舗企業の事例

以前、東京都の多摩地区の会社で創業から100年を経過した会社の企業診断に入ったことがありました。
その会社は、その時々で地域のニーズに合わせた商売をしてきました。
肥料、飼料販売(創業時は東京都多摩地区は辺鄙な田舎だった→都市化の進展で農業畜産需要が減退)
プロパンガス販売(都市ガスが通っていなかったので、プロパンガス販売→都市ガス敷設地域の拡大で需要減少)
酒屋(成人人口の増加に伴って、需要拡大→ディスカウントストアなどとの競争激化で大手メーカーのビールや焼酎が売れなくなった)
こだわり酒屋&灯油(競争を避けるため、どこでも買える製品は取り扱いを止めて、嗜好性の高いこだわりのお酒を中心とした品そろえ。電気料金の高騰で、灯油販売を強化)

こんな形で、主力事業を変更しながら生き長らえてくることができました。
この会社も現在は3代目社長ですが、10年も経たないうちに代替わりがあるでしょう。

事業再構築のお勧め

新しいことに挑戦する、事業再構築はいつの時代もあり得る選択だったのですが、今は世の中の変化が以前よりも早くなっているため、タイミングを逸して「ゆでガエル」になる危険性が増しているとも言えます。
その時々の状況変化に合わせて、新しいことに挑戦してみてはいかがでしょうか?
補助金をいただける分、初期投資を抑えることができて、投資回収期間を短縮できます。
《あとがき》
上記の酒屋さんは、産直野菜を置くべく、地域の農家とコミュニケーションを図っています。
農家も「生協への依存比率を低める」ニーズがあり、その事業者にとっても普段から売れるものをそろえることで経営リスクを軽減できる利点があるようです。