今年の9月に、川崎の老人ホームで入居者の老人が相次いで転落して死亡したという報道がされました。事件が起こったのは、川崎市の老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」でした。損保ジャパンから、問題の老人ホームを運営する(株)メッセージを買収して子会社化するという発表がありました。
老人ホーム、介護現場での虐待行為
もともと、(株)メッセージについては、入居者の転落死や虐待が相次いでいたという内容の第三者調査員会報告書が公表されていました。川崎の転落死だけでなく、系列施設で以下の行為があったということです。
「著しい暴言や拒絶的対応、心理的外傷を与える言動」19施設(40件)
「不当に財産を処分したり、財産上の利益を得たりする」15施設(17件)
「外傷が生じたり、生じる恐れがあったりする暴行を加える」14施設(16件)
この発表を受けて、同社の会長・社長は辞意を明らかにするとともに、処分検討委員会を設置するという報道がされていました。
損保ジャパンのM&A戦略
損保ジャパンはこの10月に居酒屋大手の「ワタミの介護」を買収して、社名をSOMPOケアネクストに変更すると発表したばかりでした。今回は(株)メッセージを買収して、SOMPOケアメッセージという社名に改めるとのことです。なお、(株)メッセージはもともとJASDAQに上場していましたので、上場自体は維持するようです。
損保ジャパンにとって、本業の損害保険の市場は縮小が続くことから、介護を成長事業と捉えてM&Aで拡大する戦略をとっています。ワタミの介護とメッセージ両者を買収した結果、介護関連の売上は1,100億円を超え、ベネッセの介護事業売上(873億円)を上回り、介護業界で2位になるようです。なお、トップはニチイ学館で、売上は約2,700億円です。
ただ、Sアミーユでは虐待行為が一部施設にとどまらずに発生していたことを考えると、再生していくのは現場の立て直ししかありません。ワタミの介護は親会社である居酒屋での悪いニュースが影響して入居率が低迷するという事情はあったものの、現場のサービスが悪化していたわけではありません。
しかし、業界大手とは言え、介護サービスを提供する組織として崩壊していたともいえる事業者を買収するのはリスクが伴います。現場を立て直すために、介護事業のトップがリーダーシップを発揮して、介護職員が安心して働ける職場作りをしないとならないでしょう。
とやかく言われていますが、介護業界の発展は「一億総活躍社会」の実現に不可欠です。損保ジャパンの取り組みを応援したいと思います。
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私、山下哲博は店舗ビジネスの発展支援と資金調達サポートを強みとする、小規模事業者向けのビジネスコンサルタントです。難しいことを分かりやすく、経営者の右腕になるべく帆走型のサポートを行っています。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
あとがき
介護については、40歳を超えると健康保険に上乗せされて介護費用の支払いが必要になります。介護費用を支払っている者としては、介護を安心して任せられるような社会になって欲しいと願います。