ステルスFCの事例とメリット・デメリット

中小企業診断士、FCコンサルタント山下です。

本日の日経MJ紙1面に「飲食業界でステルスFCが増えつつある」と紹介されていました。ステルスFCにあたるフランチャイズ展開は他の業界にもありますので解説します。

 

ステルスFCとは

日経MJ紙では、個店の運営自由度とフランチャイズの仕組を兼ね備えたものが「ステルスFC」として紹介されています。大きな特徴としては以下の通りです。

・統一された屋号に縛られず、好きに店舗名称を決められる

・店舗内装や提供メニューをある程度自由に決められる

・ロイヤリティが比較的安価で、飲食業だと仕入れに含まれるケースもある

日経MJ紙では、横浜家系ラーメンのギフト社が展開するプロデュース店舗が紹介されています。同社では2019年7月時点で直営74店舗を運営する他、別のオーナーが354店舗展開しているそうです。

 

ステルスFC:飲食業のケース

飲食業の場合、流行のサイクルが早く、本部が業態を作っても業態の寿命が比較的短いという事情があります。2019年時点で流行しているタピオカにしても、何年かしたら今の優位性はなくなるでしょう。ラーメンは定番商品ではありますが、栄枯盛衰というか流行りの味つけが出てきます。

フランチャイズの大きな特徴として、本部からの経営指導とロイヤリティ支払いがありますが、開業時のプロデュースに特化して、後は店舗側で自由にやってもらった方が本部にとっては手離れが良いという考えもあります。店が繁盛さえしてくれれば、本部企業から食材を卸せば本部の取り分がありますので、将来的に不振店対策をするよりも、食材の卸先としてお付き合いが出来たらよいというのは合理的な考え方でもあります。

 

ステルスFC:サービス業の場合

サービス業では、通常は本部・直営店と変わらない統一された店舗づくり、店舗名称にすることで、チェーン全体の知名度向上に努めていきます。サービス商品はサービス品質が利用者にとって分かりづらいという特徴がありますので、知名度を高めて、多くの人に名前が知られることに大きなメリットがあります。そのため、名称を自由に付けて良いという仕組みは導入しづらいです。

フランチャイズ本部にとっては、他人資本で直営店と同等の店舗が展開されていくことで、直営のない地域でも知名度が向上していくというメリットがあります。また、飲食店とは異なり、本部から加盟店に卸す商品もありませんので、売上に対する一律割合でのロイヤリティを取らないと本部を維持していけないという面もあります。

また、サービス業ではサービスの品質が重要で、接客の良し悪しがそのままチェーン全体に影響を及ぼすので、定期的な加盟店の指導は欠かせません。そのため、プロデュースで終わらせずに、開店した後もスーパーバイザーが指導に行き、ロイヤリティを徴収するというモデルが大多数です。

ただ、例えば介護事業で、好きに屋号を付けて良いタイプのフランチャイズがあります。この場合は、介護報酬の請求を本部が代行し、加盟店から一定の手数料をいただく形です。本部としては、知名度向上よりも、本部は事務手続きで収益を得るという考え方をしています。

 

ステルスFC:小売業の場合

小売業フランチャイズの代表格であるコンビニエンスストアは本部が商品開発、店舗開発、店舗オペレーションを作りこみ、加盟店オーナーはある意味「労働力」として店舗に入り、店舗を経営していきます。また、買取店なども買取の仕組みを作り、加盟店にとっては本部が無くてはならない存在になります。

一方で、ステルスFCとも言える仕組みとしては、仕入を共同で行うボランタリーチェーンがあります。食料品や家電といったコモディティ商品(替わりが利き、価格が重視される商品)については、オペレーションの良し悪しよりも商品の価格が消費者から求められます。仕入の交渉力を付けるために、小売店舗が協力して共同仕入れを行うという戦略になります。生鮮スーパー、カー用品店、家電販売店などでこのようなチェーンがあります。

 

従来のフランチャイズ、ステルスFC(運営の自由度があるタイプ)の比較

フランチャイズは商売を行う権利を意味します。権利には義務を伴いますので、整理すると以下の通りです。

○従来のフランチャイズ

(権利)

・本部、チェーンの知名度を活かして商売ができる

・本部が作り上げたノウハウに沿って店舗オペレーションが可能

・チェーン化することで仕入条件が有利になる

・加盟後も継続的に経営指導を受けられる

(義務)

・加盟金や月々のロイヤリティ支払い

・運営は本部の指導に従う

 

○ステルスFC(運営の自由度があるタイプ)

・加盟店は本部から仕入れができ、個店で仕入れるより有利

・開業時には指導を受けることができるが、開業した後は、認められた範囲で自由な店舗運営ができる

(義務)

・仕入れは本部の定めたルールに従う

・加盟金や月々のロイヤリティ支払い(一部不要なチェーンもあり)

・店舗運営の自由度が広い

 

どういうフランチャイズ本部を作ったら良いのかという点について、結論を言えば、どちらのやり方にも一理あります。ただ、表面だけ真似るというよりは、どういう目的でどのように展開していきたいのかを整理するべきです。本部にとってはしっかりと権利と義務の関係を検討しておかないと、加盟店にノウハウを取られ、将来的には競合店として脅威になってくるかもしれません。

フランチャイズ展開をお考えであれば、最初の設計が重要になってきます。最初から大きな額を支払って一気に広げていくという考え方もありですが、小さく始めていく予定であれば、一度ご相談にいらしてください。問い合わせフォームよりお問い合わせください。

 

◆自己紹介

私、山下哲博は、経営革新等認定支援機関の登録をしているビジネスコンサルタント(中小企業診断士)です。

得意分野はフランチャイズの本部立ち上げですが、会社の成長につながる経営計画作り、補助金申請など、ビジネスの成長、新規立ち上げをサポートしています。また、最近、スモールM&Aのサポートも始めています。

・創業時の創業計画、創業融資獲得

・店舗の収支改善、集客、多店舗展開・フランチャイズ展開→ハンズオンで支援します

・資金調達のための事業計画(銀行から言われたら一緒に作成します)

・日本政策金融公庫の経営力強化資金(通常より低利です)

・新しいことに挑戦する経営革新計画、経営力向上計画

・ものづくり補助金など、補助金申請

・会社の成長戦略を描くための早期経営改善計画(費用の3分の2は補助金使えます)

・スモールM&A(外部への会社/事業売却)のお手伝い

 

あとがき

最近、ブログ書くのは週1回と決めていたのですが、日経MJ1面に目立つ記事が出ていたので触発されて書いてみました。お読みくださり、ありがとうございました。