ファンドから4億円を調達した。その経緯と調整事項

独立の中小企業診断士として7年仕事している中ではいろいろな経験をさせていただきました。資金調達という面では尖った経験もしてきていますので、こちらで記してみたいと思います。

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ヘルスケアファンド

これは以前の顧問先でのお話です。介護事業を営んでいる事業所の代表者が政府系ファンドを運営する公的機関の担当者を紹介してもらったのがきっかけでした。もっとも、その時にはファンドは組成されていなく、計画が内々に進んでいるという段階でした。始めて担当者にお会いしたのが1月、それから月1回ほどの打ち合わせをするようになり、具体的に動き出したのは5月です。

・○○年1月 ファンド担当者と顔合わせ

月1回のペースで打ち合わせ

・○○年5月 基本合意書と出資のストラクチャーの提案

 

出資のストラクチャー

出資を受けるといっても、その会社は資本金が1,000万円に満たない額でした。億単位で出資を受けるには工夫が必要です。ご提案いただいたのは、資本金と同額の普通株式、残りは議決権のない優先株で出資していただくということです。

資本金と同額の株式だと出資を受ける会社とファンドとで50:50の株式比率、いわゆるデッドロック状態になります。できれば、出資を受ける会社としては51%を押さえたかったのですが、確実に出資を受けたいという会社代表者の意向もあって、その条件を飲みました。

なお、ファンドの株主は政府系機関が設立した会社がGP(無限責任組合員)、地方銀行数行+都市銀行の金融機関連合がLP(有限責任組合員)として構成されていました。

 

基本合意の後

基本合意がなされますと、メンバー間で秘密保持の義務が発生しますので、ものごとがどんどん進んでいきます。

・○○年7月 デューデリジェンス(企業統治・法務・財務)

・○○年8月 契約書の詰め

・○○年9月 資本注入

まずはデューデリジェンスです。その前にも様々な資料を請求され、出せる資料、社内の状況をヒアリングして作成、ギブアップしたものとありました。デューデリジェンス当日は弁護士が5人で乗り込んでこられ、あれこれ質問されました。中にはデリケートで答えに困る内容もありましたが、代表者と自分の2人で誠意を持って答えていきました。

ただ、資本金が1000万円に満たない会社ですので、企業統治が完璧かというとそういうことはなく、管理しておくべきことができていないという点もありました。大いに反省すべきですし、政府系機関から出資を受けたらやらなくてはならないことです。

 

契約書の草案を示されたのは出資を受ける2週間前でした。その事業者が1号案件ということもあり、ファンドの担当者にとっても不慣れなことでバタバタしていましたが、契約も無事に済んでお金が入ってきました。

 

出資を受けた後

お金が入ったといっても、お金は別口座に管理され、手続きを踏まないと勝手に引き出すことはできません。その会社は、これまでは直営店を出すときは銀行に融資相談に行っていましたが、ファンドのお金を使えるようになりました。ファンドと定期的なMTGを行い、計画の進捗に従って資金の引き出し許可が出て、引き出すことができます。その代わり、細かい点であっても、今まで以上に意志決定のプロセスが重要になりました。

例えば、これまでは会社代表者がノートパソコンを買いたいと思ったらすぐに購入できたのが、「どうしてパナソニックのレッツノートなのか?もっと安いパソコンもあるのに合理的な理由を示して欲しい」と言われるようになりました。その代表者はあちこち飛び回って講演したり、コンサルをしたりということをしていましたので、バッテリーの持ち、パソコンの堅牢性、モバイルだけれども外部機器との接続に必要なものが揃っているという点で、価格は高くてもレッツノートが最適なのです。このように内部で稟議書を作ってファンド担当者に承認してもらうようになりました。

その他にも、出資を受けた理由に直営店を広げていきたいという方針がありましたので、既存店が順調に黒字転換しているか、物件の選定基準はどうなっているかなど、これまで代表者のカンと経験と度胸で判断されていた部分が理詰めで検討されて、決定されるようになりました。

 

 

私はこちらで述べた会社にフランチャイズ本部構築のために顧問で入り、フランチャイズ展開加速のために役員にしてもらい、ある程度成果も出たので、どこで身を引こうかと考えていました。そのタイミングでファンドからの出資話が来たので、自分が通訳になって橋渡しをしようと思い、話がまとまるよう代表者とファンドの双方の調整をしました。身を引くのが半年遅れましたが、良い経験をさせてもらいました。

 

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私、山下哲博は資金調達サポートとフランチャイズを専門分野とする小規模事業者のビジネスサポーターです。企業の成長戦略をサポートすることで、地域にビジネスの芽が定着できるようお手伝いしています。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

あとがき

昨日は夕方から録画していたラグビーW杯の準決勝2試合を一気に観ました。どちらの試合も接戦で、すごく面白かったです。このW杯を観てから、サッカーよりもラグビーの方が好きになりました。